食の安全・安心は、「なぜそうしなければならないのか…」を従業員に伝えること、理解してもらうことです。


ここでは、食品製造業における衛生管理のうちのいくつかの重要なポイントをイラストで示します。現場に立った視点で具体的に留意いただきたい点を解りやすく紹介します。


◆行動計画の周知、人材育成で従業員を戦力化

連絡掲示板は必ず見る習慣をつけましょう。

 工場のそれぞれの職場を担う人たちは、様々な時間帯で働いています。製造業務においては、その皆さんに確実に知らせなければならないことがあります。人伝えに加え、掲示板による通知で徹底したいものです。

始業前にちょっとだけ打合せしよう。

  工場は多くの人たちによって運営されています。毎日安全に製造活動を続けるには、お客様からのご要望や工場内での毎日起こる色んな出来事への対応を、予めコミュニケーションで周知する必要があります。「知らなかった」が事故につながることもあります。

成功も失敗も共有して、一緒に強くなる。

 誰かの失敗でもチーム皆で学び、どこかの成功でも皆で活かす姿勢が作業のレベルを確実に上げます。良かった点、悪かった点をしっかり押さえることが、自社の再発防止に役立ちます。

現場で教える(OJT)ことが一番の即戦力育成。

 仕事場で実際にやって見せること、やらせてみて間違いを正すことが訓練の第一歩。習慣化するまで見逃さず注意することです。


◆整理整頓のやり方、食品の扱い方をルール化、習慣化

「整理整頓」は最強の資源節約です。

  決められたものを決められた場所に置く…これだけで、見つけ易い、要らないものがわかる、限られたスペースを効率的に使える、減った在庫や増えた在庫に直ぐ対応できる…多くの資源を節約できることがわかります。

食品や包装材料を置く場所は床から60㎝以上。

 食品や包装材料を一時的に置いたり保管する場所は、床から60センチメートル以上の高さの場所を確保してください。

床からのはね水やゴミがかかりにくい高さになります。

原材料の保管中の破損・汚染に注意

 原材料は、着荷時に荷姿、外観を見て、破れや汚れがないことを確認しますが、その後の保管中も中身の漏れや汚染がないよう管理しなければいけません。

使った道具は決められた場所に戻しましょう。

工場内には製造のための機械の他に、清掃道具、機械工具、殺菌剤等薬剤など色んなものがあります。いつでも直ぐ使えるように、使用後は元の決められた場所に戻しましょう。

食品を床に直に置かないこと。

  誰もが知っていることですが、これがなかなか徹底できません。食べ物を扱う意識を持ち、床からの汚染を絶対に避ける取扱いを習慣化しなければいけません。

裸の食材には蓋、シートをかけて、裸保管禁止。

 裸の原材料、仕掛品、製品には蓋、シートをかけて異物の混入事故を防いでください。製品が直接触れる包装資材を保管する時も、ほこりや異物が付着しないようカバーして下さい。


◆衛生レベル(汚染と清潔の区域・道具・作業)で行動を変える

ドア、ボタンに手のひらで触れない衛生行動。

 今ではエレベーターボタンでも階ボタンに触れない方法が採用されてきました。腕で、肩でドアやドアノブを動かす、ボタンはゲンコツの角で押す…手のひらを使うと汚れる恐れがあるからです。

扱うモノの衛生レベルで区分けし、使い分ける

 下処理や処理前の加工に使う器具、道具と製品の最終加工や仕上げに使う器具、道具は使い分けて下さい。できれば専用として「色分け」がベストです。アレルゲンの処理に使う場合も同様です。

清潔な作業場所と汚染の可能性がある作業場所はハッキリ分けましょう。

 盛り付けや製品包装場所は清潔区域、洗浄や下処理場所は汚染区域として、衛生レベルをそれぞれ分けて、交差汚染を避けましょう。

食品に直接触れる作業の人は、原則他のモノに触れてはいけません。

 食品に直接触れる作業(衛生手袋装着含め)や食品を入れる容器や触れる器具を扱う作業を行う人が、他のモノに触った後、再び元の作業に戻る時は、必ず手洗いと消毒をしなければいけません。


◆衛生を管理することは、ルールを守ること

自社の作業マニュアルを確立し、従業員へ周知徹底しましょう。

 作業に従事する人の行動はマニュアルで標準化してください。マニュアルに基づき作業し、改善はマニュアルの改定により行うルールとして下さい。

アレルゲンは材料も道具も識別・区分けして

 アレルゲンは識別して、他の原材料と区分けして保管して下さい。また、使用する容器や器具類も識別して、他の原材料用のものとは分けてください。

ルールの維持のために食の安全パトロール

 ルールは僅かな心の緩みから逸脱が起こります。一人の逸脱が広がり職場習慣になることもあります。定期的に管理監督職の巡回監視が必要な場合があります。(モニターカメラも可)

 


◆衛生を管理することは、データに基づくこと

食の安全には記録が必要です。

 食品を製造するに当たり、私たちは各製造工程の適切さを確認しています。製品の安全性を確実にするために各プロセスの処理の適切さを証明するものが、記録です。

自社の作業マニュアルを確立・周知しましょう。

 原材料や包装資材の受入れは、立ち会って確認の上受け入れてください。発注数量通りであることの他、汚損が無いこと、原材料なら温度管理、賞味期限、鮮度のチェックも重要です。

原材料や仕掛品の賞味期限、仕掛品や製品の食味検査は定期的に実施。

 原材料の賞味期限は受入れ、保管中、使用前に確認してください。仕掛品や製品の出来栄えを実際に食べて出来具合を確認することも品質管理の重要な仕事です。

処理温度、濃度は測定して確実に行う。

 加工プロセス中の加工温度や時間、処理濃度などは衛生レベルに大きく影響する要素ですから、確実に測定し加工が適切に行われたことを確認する必要があります。